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こんにちは。JR名古屋高島屋店の池松です。今回は、フォーマルシーンにおけるドレスコードと、ブラックフォーマルウエアについてお話させていただこうと思います。
招待された式や会の案内にドレスコードが記載されていると、戸惑う方や面倒と感じる方がほとんどかもしれません。しかし、私はドレスコードの記載がある案内状が届くと安心します。なぜなら、主催者が思う「場の雰囲気に合った装い」を考えるのが容易になるからです。
世界的な原則として、場所だけでなく開催される時間帯によっても明確に着分けるルールがあります。日本では17時から18時を境に、昼と夜の装いを変えなければいけません。それに加えて、男女共に慶事の場合の正礼装、準礼装、略礼装。弔辞の場合の正喪服、準喪服、略喪服それぞれに昼と夜の装いがあります。それに立場も考慮しないといけません。正直相当詳しい方以外は何をどう着て行って、どうコーディネートしたらいいものかわからないと思います。ですから私は、ドレスコードはとても親切な助言なのだと考えています。
では、百貨店や様々なブランドで「どこにでも着ていける略礼服ですよ」とオススメされるブラックフォーマルスーツはどうなのでしょう。グローバルスタンダードとしては昼夜の着分けは原則ですが、現在日本では唯一昼夜共に着てもいいとされているのがブラックフォーマルスーツです。
始まりは「略礼服」とされ、フォーマルウエアを販売しているお店のスタッフもほとんどの方が「略礼服」と呼んでいるブラックフォーマルですが、近年では「準礼装」に格上げになっています。ちなみに現在の「略礼装」はダークスーツです。日本では昼も夜も着られて、慶事も弔辞も使える、まさに万能な一着です。男性の正礼装は小物までほとんど決まってしまっているのですが、ブラックフォーマルスーツは、コーディネートの幅が広いのも受け入れやすさの一つですね。
しかし、結婚式のゲストで着用する際のコーディネートには要注意です。ブラックフォーマルに合わせるネクタイには、白を合わせている方が多いのですが、正式にはシルバーグレーの無地か白×黒ストライプです。
もう一つ、店頭でのお客様のお声で多いのが「ダブルブレストの上衣が正式ですよね?」とか「ダブルブレストじゃないと格が下がるのでダメって言われたんだけど…。」というものです。答えは、シングルでもダブルでもどちらも正式です。格の違いもございません。なぜそういったお声や、間違った認識が多いのでしょうか。
実は日本では、平安時代のほんの少しの時代と、明治以降の一部の階級の人たちを除いて、一般には礼装としての色は白でした。少し前に歌舞伎役者の奥様が、告別式に真っ白の和装で参列されているのを報道されていた事は記憶に新しいです。葬儀に白の装いはアリかナシかの議論もありました。グローバルスタンダードの礼装は、国同士の取り決めで決められていることですが、フォーマルウエアには「ローカルカスタムリスペクト」という考え方があって、その国、その地方の慣習に則るという考え方があります。ハワイのアロハシャツや、沖縄のかりゆしウエアが結婚式で許されるのと同様、純白の喪服もまた、正しい礼装の在り方です。
現在のフォーマルの形が一般に広まってきたのは、戦後の1960年頃からで、まだまだ歴史が浅いです。白のネクタイは、そういった今までの慣習と新しい波が混ざり合ったなごりではないかと私は思っています。そして高度経済成長の中、礼装もグローバルスタンダードに合わせようと「略礼服」として売り出されたのが、ダブルブレストのブラックフォーマルスーツでした。それが親から子へ口伝されていった結果が、先のお声に繋がっているのではないかと考えます。
正しい装いというものは確かにあるのですが、間違ったまま正しいと信じている人は少なくないです。その地方の慣習や親族の皆様の経験を、間違っていると決めつけてしまうよりも、装いに思いを込めてお祝いや、お別れをするほうがずっと大切ですし、素敵なことだと思います。正しい知識を持って、柔軟な着こなしをしていきたいですね。
次回以降は、正礼装から略礼装まで着こなしのルールとポイントを詳しくご紹介していきたいと思います。此方のブログが、皆様の知識向上の一助になると幸いです。
from Ikematsu(JR NAGOYA TAKASHIMAYA)