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ネクタイ―――「スーチング」という制限の中で、自らを規律し縛り付けるもの。一方で、狭いVゾーンという枠組みにおいて個性と趣味嗜好を反映させる鏡という役割も。
スーツとシャツ、ネクタイのマッチングを考えることは、スーツを着る人間にとって、最も愉しい時間でもあります。ネクタイの良し悪しは、①素材②発色③芯地とのバランス がすべて。キュッ!と締め上げたときにそれはカタチとなり、永く愛用できるネクタイかどうか真価を問われることになります。
去る2月、五大陸は最高の素材を求め、イタリアのコモ湖に行ってきました。イタリアとスイスの国境付近に位置するコモは、ミラノから列車で30分。アルプス南麓の美しい山々に囲まれた湖水地方で、かつての著名な小説家や芸術家もこの地で多くのインスピレーションを得たといわれています。
長さ40km、最大幅4.4kmの湖の両岸には、ヴィラやホテル、レストランなどが立ち並び、ヨーロッパ的リゾートの風景を演出しています。コモは昔から、美しい水を活かし、絹織物産業が盛んに行われていました。街中にも名産品として絹織物が数多く並んでいます。そのようなコモに歴史のあるネクタイのつくり場があります。
「フェルモ・フォサッティ Fermo Fossati」。1871年創業の、歴史あるネクタイメーカーです。五大陸は次のシーズンに向けて新たなネクタイを開発するため、このフォサッティ社を訪問したのです。
まず驚かされるのは、膨大なアーカイブ資料。手間がかかりすぎて現在では再現できないようなパターンや色の表現。まさにここでしかできない、ここにしかない資料の数々。非効率という理由から現在ではほぼ使われない「狭幅」の織機も、丁寧にメンテナンスされて実際に稼働しています。
フォサッティ社の素材が何よりも優れているのは、「色」の美しさ。アルプスの水の恩恵にあずかるところも大きいですが、それらを生み出す人にも大きく起因しています。美しい色の表現は、美しい自然や建造物に囲まれ生活している職人の方たちだからこそ成し得るのです。
過去のアーカイブ資料をひっくり返して現代の感性に落とし込んだ数種類のオリジナルネクタイを現在生産しています。2020年の春には店頭に並べられると思いますので、是非お楽しみにお待ちくださいませ。
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