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こんにちは。企画チームの後藤です。今回は、御幸毛織(みゆきけおり)のものづくりに関してのお話です。
御幸毛織の名は、1957-1990年まで続いた長寿番組『ミユキ野球教室』でご存知の方も多いのではないでしょうか。1905年(明治38年)に、名古屋市内で織布と染物を祖業として工場を開業したのが御幸毛織のはじまりです。戦後の高度経済成長期に、高級仕立紳士服地の分野で立て続けにヒットを飛ばしました。現在五大陸では日本の職人技術を世に伝えるべく、御幸毛織と取り組んで素材開発を行っています。
三重県・四日市市。ここに御幸毛織の工場があります。非常に大きな規模の工場であり、かつては裏手に野球グランドを構えるほどでした(現在は環境に配慮しソーラーパネルが敷き詰められています)。
御幸毛織でつくられる生地の最大の特徴、それは自社工場内で行われる「フィニッシュ」(整理加工)にあります。通常、機屋で織り上げられた生地は、一旦別会社の「整理工場」と呼ばれるところで最終仕上げを行います。しかし、御幸毛織は自社工場内に整理加工工程を行う為の設備を保有しており、自社内で一貫したクオリティコントロールを行うことができるのです。
整理加工工程という言葉は聞きなれないと思いますが、簡単に言えばすっぴんの生地に化粧をする事。具体的には、水洗いであったり、余分な毛羽をカットしたり、生地の縮絨(生地を詰めること)であったり、プレス(圧縮)であったり。実は、織上がったばかりの生地はごわごわ。このフィニッシュを経て、生地はようやく世の中に出荷されていくのです。
御幸毛織では、フィニッシュによる華美な化粧を行うことはしません。あくまでも原料本来の良さを引き出すフィニッシュが特徴です。それは効率が悪く、気が遠くなるほど手間のかかる作業なのです。鈴鹿山麓に由来する美しい水で生地を洗うこと。その際には環境と生地にやさしい天然石鹸を用いること。人間に例えるならば、良いシャンプーと良い水で髪を洗うと髪の調子が良くなるのと同じイメージでしょうか。そして、天然の檜(ヒノキ)を整理機械の各所に取り入れ、生地を傷めないように仕上げるのです。このような小さなこだわりの積み重ねが、最終的には美しい生地となって結実します。
五大陸と御幸毛織の代表的なコラボレーション生地といえば「ドライスピナー」。サウスアフリカンジャーマンメリノという品種の羊をエクスクルーヴし、高品質な素材開発を行っています。ウール100%で、きれいな地艶を持ち、ナチュラルストレッチ性に優れます。
糸もしっかり打ち込まれているので耐久性も抜群。何年も着ていただけるスーツづくりを目指して、現在も更に進化した素材開発をしています。旧き時代より受け継がれた職人技術を身にまとい、その背景にあるストーリーに想いを馳せてみるのも一興ですね。
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